なにやらむむっとくるタイトルになってしまいましたが、久々に短いお話を。
キング×ナイン。
久しぶりの休暇に2人でデート。
ちょい甘。
久しぶりの休暇に2人で町に出た。
戦火で壊れ、傷の残る町で瓦礫の隙間から凛と咲く花を見つけた。
血の花「あ?どーしたよ、キング」
地に目を下ろしていたキングに気付いたナインが不思議そうに聞いた。
「…ああ、花が咲いている」
「はなぁ?」
まさか花が何か分からない訳ではあるまいと思いつつも、指さして示してやると覗き込んだ。
「ああー、花だなぁ…ってこれがどーかしたかあ?」
「随分と赤い花だと思ってな」
朱雀を象徴する朱にも似たその色に自然と見入ってしまったのかもしれない。
「そうかぁ?赤い花なんて他にもあんだろ?しらねーけど」
あまり興味もなさそうに頭を掻きながら適当に返す。
「まぁな…けれど、前に誰かに聞いた事がある。赤い花の下には死体があって、その死体の血を吸って赤くなるとな」
ふと思い出した話だった。何気に話したつもりだったがそれを聞いた瞬間、ナインは顔色を変えた。
「うげっ!?マジかよ!!」
そういえば、こいつは人の言った事に対してあまり疑いを持たない。幼い頃から一緒に居る者に対しては特に。だから、ジャックなどによくからかわれて嘘を吹き込まれる。その度にキングが訂正する役に回っていた。
「噂…だがな」
と、とりあえず後付けする。キング自身この話が本当かうそか真意は分からない。
まさか、そんな事と思える話だが、こんな時代だ。そんな話が生まれてもおかしくないほど、この世界は血生臭い。
「ほんとだろコラ、だってその花咲いてる下、瓦礫じゃねーか…誰か埋もれてんじゃねーのか?」
更に覗き込む。
「ないさ、この瓦礫は人が掻き集めて置いてるだけだ。死体があったらすぐ分かる」
「…キングがそんな話すっから気になっちまったんだ」
素直すぎて時々可愛いと思う。
「ふ…すまんな」
「あー、もう行こうぜ。せっかくの休みだってのに変な話すんなよなー」
久しぶりに2人きりで出かけるのを楽しそうにしていたナインだっただけに、今の話は不味かったかもしれない。
だが、キングの中にはその花がナインにいちばん似合うのではと思っていた。
戦場にて朱いマントを翻し、赤い槍を振り回す姿は誰よりも映える。
ナインの内にある燃え上がる怒りと言う原動力もまた、赤い色が相応しい。
キングは徐に足元に咲くその花を一輪、摘み取った。
「ナイン―」
「あ?」
赤い花をナインの耳にかける。
「…んだぁ?これ…」
訳が分からずキングの眼を見つめる。
「お前には、赤い花が似合う…そう思ってな」
「はぁ?」
まだ、意味が分からない。
「恥ぃんだけど…よせよ、俺は女じゃねーっつの!」
キングの言葉の意味が分からない、理解したのは町中で花を頭に付ける男なんて変で恥ずかしいという事だけ。
道行く女性や子供らが不思議そうにナインとキングを見ているのに気づいて、恥ずかしくて花を取った。
「…怒ったか?」
「…怒ってねーけど恥ずかしいっつの!」
口調は怒っているようにしか聞こえない。
手に持っている花に目をやったまま、キングとは目を合わせない。少し顔が赤いのは気のせいではない。
「キングがすること、たまによくわかんねーよ…」
「そうか」
「わかんねぇー…」
「…そうか」
「けど…」
「けど?」
「嫌じゃねぇ…」
その言葉はどこかキングを安心させる。
キングの突拍子もない行動で戸惑いながらも、別段キングを嫌いになる事はない。
「…キレーだな、花」
「そうだな」
綺麗だ。
誰よりも。
戦場のナインは。
一瞬だけ見た、赤い花にも霞まないナインは。
しっかりと目に焼き付けた。
忘れないように。
「さっきの話、嘘だよな」
「ただの噂だ。気にするな」
「人の血吸ってるならこんないい匂いしねーぞ、コラ」
全くその通りだ。
人が起こした争いの中でも逞しく咲く花からすれば迷惑な話に過ぎないのかもしれない。ナインにしてはいい所に気づけたものだとキングは感心した。
「って、早く行こうぜ!」
我に返ったようにナインはキングの手を引っ張った。
片手にしっかりと赤い花を持ったまま。
「その花、いいのか?」
「ああ?んだよ、俺にくれたんじゃねーのかよコラ!」
「男が花なんて恥ずかしいんじゃないのか?」
少しからかい気味に言う。
「キングがくれたもんはなんだって嬉しいんだよ!」
また、顔を赤くしているのだろう。キングからはナインの後ろ姿しか見えないが。
そうして、可愛いと思う度に愛しさも増していく。
引っ張る手が熱い。
休暇は短い。まだ、もう少しだけナインといる時間が欲しい。
欲張りが顔を覗かせる。
こんな時間がずっと続けばいい。
キングは想いを伝えるように手を強く握り返した。
□■□■□
久しぶりのキング×ナインで御座います。
もう、いろいろ訳解らず。
何としてでも花の似合うナインにして見せたかった…。それだけだ。
話のもとになったのは、彼岸花が赤いのはその地面の下に死体があるからーなんて言うちょっととんでもない迷信からです。花には結構そんな迷信があったりしますから、いいネタになるんですよね。彼岸花はほかにも火事になるとか、むやみに抜くななんて言われた事もありました。全然彼岸でもないのにこんな話してすいません。
ここらは全然咲きませんが、畑に植えるとモグラ避けになるそうです。根に毒があるから。
あうー、K9もっと見たいー。
萌えが不足してきた…。
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