記憶の欠片 言葉の泪 2
声の主が視界に入る。
一瞬、迷い人かとも思った。
ただ、その額に大きく斜めに走る傷跡に覚えがあることに気付く。
―まさか。
ウォーリアはそう思った。
しかし、じっとこちらを見ているあの立ち姿は今でもはっきり覚えている。
「・・・スコール・・・?」
これは夢なのだろうか。
スコールや皆は確かに9年前のあの日、ウォーリアが見ている前でひとりずつ、それぞれが帰る場所へと帰って行った筈だ。
ウォーリア自身、どんなに願っても会えるとは思っていなかった。役目を終えた今、別々の世界で生きる戦士達が再び集うことなど2度とないと思っていたのだ。
目の前にいるのは本当にスコールなのか。
会いたいと願う己の想いが生み出した幻か。
「・・・本当に、スコールなのか・・・?」
時が止まったかのような思いの中で、2人はしばし見詰め合う。
「・・・俺は、夢でも見ているんだろうか」
(ああ、彼も同じ事を思っているみたいだ・・・)
ウォーリアはゆっくりとスコールに近づいた。
9年の時は彼をもっと大人にしたようだ。顔立ちも前より一段と凛として見える。額の傷は変わることなく残っており、獅子としての風貌を栄えさせる。
若獅子はもう立派な獅子となっていた。
右の手でその頬にそっと触れる。頬にかかる茶色の髪を掻き分けるように、優しく触れてみる。
真っ直ぐに見つめ返す自分と同じ色をした瞳は揺れることなく、触れずにウォーリアを必死で確かめていた。
「背・・・伸びている・・・」
触れて気付いたスコールの身長。
あの時、仲間達の中でウォーリアがいちばんの長身であったのに、今のスコールは既に自分と同じくらいになっている。
「・・・何も言ってくれないのだな」
触れても、言葉をかけても何も反応してくれないスコールに少しじれったくなったウォーリア。
「相変わらずの無愛想」
大きく変わっている事とまったく変わっていない事。
そのギャップの違いに思わず笑ってしまった。
「笑うこと・・・ないだろ・・・」
ようやく口を開いたスコールは少し照れくさそうに言った。
「・・・これでも、やっと会えたと思っているんだ」
「会えて喜んでいる顔には見えないがな」
「気が少し動転しているんだ。まさか、ここで会えるとは思ってもみなかったからな・・・」
「スコールでも気が動転するんだな」
(・・・俺だってそうなる時もある・・・)
「今、自分でも動転するって思っただろう」
(何で分かった・・・)
「そんなところも相変わらずだな、スコールは」
「・・・う」
痛いところを突かれたような顔をするスコール。
「会えて嬉しいよ、スコール。ここは私の家だ。ゆっくりして行ってくれ」
スコールの手をひいて、家の中へ招いた。
その握る手が会えたことに喜んでいる。
スコールも自分の想いを上手く口に出来ない代わりに、ウォーリアの白い手を強く握った。
会えた喜びと同時に、その手は訴えてくるようにスコールに伝わる。
ずっと独りで、寂しかったんだ。
(・・・もう・・・大丈夫だ・・・)
ちゃんとここに居る事を伝えるように、スコールは暫く手を放さなかった。
□■□■□
なんだか照れくさくなったのは私の方だ。
スコールの背は伸ばしてみた。さすがにウォーリアがでかすぎるので、ウォーリアをこすまでの背は控えたほうがいいなと思ったので同じくらいに止めましたが。
無愛想じゃないスコールなんてスコールじゃない。と言いたいところです(笑)
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