約束の眠りもう、大丈夫。
全部終わったんだ。
これから何をしようか。
たくさん、たくさん、知らなかった事を学んで。
遊んで、話して、たまには休んで、また歩いて。
「少し休もう。眠くなってきた…」
「そーだね。笑ったら安心しちゃったし」
「いっぱい泣いたし?」
「マザー、迎えに来てくれるよね?」
「あたたかいベッドの上でやっと休めるんだね」
「目が覚めたらきっとマザーが居るよ」
「ゆっくり休んで、その後でたくさんやりたい事しましょうね」
手と手を繋いで、寄り添い合ってひとり、またひとりと目を閉じていく。
「…みんな眠っちまった…?」
「…俺とお前以外な」
ナインとキングはまだ眠りについていない。
「…やっと終わったなぁ、何かあっという間だった気がする…」
「そうだな…この戦いで、やるだけの事はできたはずだ。悔いはないだろ?」
「あー…ひとつだけ残してな」
「ひとつ?」
ナインはキングの横に座った。
「今日、誕生日じゃん?」
「…ああ…」
自分でも忘れていた。それどころではなかったのだから。
「お前にしてはよく覚えていたな」
「んだコラァ、何年一緒に居たと思ってんだよオイ。それに、俺ん時にプレゼント…くれたじゃねーか…」
「フ…そうだったな」
一緒に暮らしていたが、今まで誕生日にプレゼントなどした事がなかった。
そういった関係になってからだが、キングはナインに一度だけプレゼントを贈った事があった。
「…お前の好みも何も知らずに買ったが、気に入ってくれたな」
「ったりめーだろ。キングから何か貰うなんて食いもの以外初めてだったし?」
思い切り空気の読めていない言葉だ。
「誕生日なのにこんな日になるなんてなぁー」
「一生で忘れられない誕生日さ」
「そんでさー、俺も何かやろうと思っていろいろ考えたんだけどよぉー」
「全く思い付かなかったんだろ?」
「何でわかんだよ」
「考えるのが苦手なくせに思いつくはずがない」
きっぱり言い切られる。
「…ま、まぁ、いろいろあったしよ?結局何にも買えなかったぜコラ」
「別にいいさ。お前の選ぶプレゼントを想像しただけで身の毛がよだつ」
「んなっ!?このっ―」
ナインが怒る前に襟首を掴んでその口を塞いだ。
きっと、これが最後だ。
だから、いつもよりずっと長く、ずっと深く、全ての思いをぶつけるように。
ふと、あたたかいものが頬に触れる。
「…ナイン?」
「…」
「…泣いてるのか?」
いつもなら直ぐに泣いてねぇと叫ぶくせに。
「…いやだ…」
消えそうな怯えた声。
「…いやだ…死にたくない…まだ、生きたい…!まだ、一緒に居たい…!」
うな垂れて泣き続ける。
もう他のみんなは眠って、動かない。
「マザー呼んでこようぜ…そしたら、そしたらマキナとレムも助けてくれる!みんなも…!」
キングもそれが出来るのならと心のどこかで願った。
だが、もうそれは出来ない事はキングだけでなく、ナイン自身も分かっている。
避けられない運命。
死ぬ時は死ぬんだと言いきっていたナインが死を前にして必死でもがく。
死など、怖くなどなかった。
その筈だった。
絶望させるだけかもしれない。
キングは首を横に振る。
見開いて涙に濡れる眼は震え、恐怖と絶望に満ちて。言葉さえ、失った。
それでも、死を前にして選ぶ事が出来るのなら。
絶望の先に希望があるなら。
「…ひとりじゃない。そうだろ?」
「…」
「約束しただろ?ずっと、一緒だと」
手で涙を拭ってやる。
「俺も、お前も、みんなも…ひとりじゃない」
自分にも言い聞かせるように。
次第に、その眼は落ち着きを取り戻していく。
「…あ…ああ、そーだな…わりぃ。俺、だせーよな」
そんなナインを抱き寄せた。
「いいや。お前が居なかったら、俺も泣いていたさ」
「キングが泣くとこなんか想像できねーよ…」
ナインは、笑ってみせた。
そして、照れくさそうに耳元で囁いた。
「な、誕生日おめでと…」
キングも笑って、その手を握った。
寄り添い、先に眠ったみんなにならってゆっくりと目を閉じた。
もう、大丈夫。
全部終わったんだ。
目を覚ましたら、また一緒に笑おう。
◇◆◇◆◇
キング誕生日おめ―。の日があの日と重なるとかさー。お前はどんだけかっこ良い生き様見せつけやがるのですかー。うおー!それとこれとが重なっているのを知った時、私はもう、どうして良いのやら、あ。そうか、ネタにすればいいんだって、涙腺破壊されながらずっとクリア後から考えてましたよっっっ!!
ナインがキングからなにをプレゼントしてもらったのかは皆さんのご想像にお任せします。私の中ではあれがいいな~なんて思っていますが、表向きには書きませぬ。
と、言うよりなんかありえねーなと思うのであまり深くは考えない。
やっぱりこの2人は好きすぎてたまらん。
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